薬の話

ワルファリンKの服薬指導

ワルファリンKの服薬指導ポイントを現役薬剤師が解説します。

 

ワルファリンKの商品名はワーファリンで(エーザイ)あり、こちらの方が聞き覚えがあるかと思います。

ワルファリンKは、かつてカナダや米国北部で牛の餌であったスイートクローバーから分離された古くからある薬剤です。

 

説明のポイントとしては以下のようなものになります。

1. 血液を固まりにくくする。

2. 検査値(PT-INR)によって量が変わる。

3. 納豆・青汁・クロレラは禁止。

 

 

1. 血液を固まりにくくする。

血をサラサラにするなどの表現でも良いと思います。

抗凝固作用を示すため、転倒・ケガなどに十分に気をつけてもらうよう説明することが必要です。日常的に注意をする必要があることの具体例としては次のようなことが考えられます。

・歯ブラシは硬めのものは避け、柔らかめのものを使用し、強く磨きすぎないこと。

・髭剃りは剃刀を避け電気シェーバーを使用すること。

・ケガの可能性がある仕事や運動、またバイクの運転などは避けること。

このような具体例を出すとわかりやすいかと思います。

あまりにも出血が止まらない場合や、血尿、血便、原因不明の出血などがあればすぐに医師に相談してもらうよう説明することも必要です。ワルファリン効きすぎている可能性があり早期の対応が必要です。

 

 

また手術や抜歯など出血を伴う処置を受けるときは医師に相談するよう説明が必要です。

処置の侵襲度や出血リスクによってはワルファリンの休薬が必要となる場合もあり、休薬の必要性は医師の判断によります。逆に休薬して抗凝固療法を止める方が危険な場合もあるため必ず医師の確認が必要だと考えられます。

 

 

2. 検査値(PT-INR)によって量が変わる。

目標とするPT-INRに合わせて内服量を変更する可能性があります。この値は食事や併用薬などの影響を受けやすいため値が変動しやすいため、定期的に採血を行い確認する必要があります。

内服量が受診の度に変更となる可能性があるため、患者さんの十分な理解が必要になるため十分な説明が必要であると考えます。

PT-INR(Prothorombine Time - International normalized ratio)はプロトロンビン時間国際標準比のことで、血液が凝固するまでにどれくらいの時間がかかるかがわかる検査です。数値が高いほど血液が凝固しにくいこと表し、ワルファリンを内服していると数値は高くなります。

ワルファリン内服時のPT-INRの目標値は年齢、疾患などを考慮する必要があるため一概には言えませんが2.0前後です。下限としては1.5、上限としては3.0と考えて良いかと思います。

 

 

3. 納豆・青汁・クロレラは禁止。

これら納豆・青汁・クロレラが禁止の理由はワルファリンの効果を下げるビダミンKを多く含有しているからです。納豆の場合は納豆菌が腸内でビタミンKを産生するため少量の摂取でもワルファリンの効果を抑制してしまいます。

ビタミンKは凝固因子である第Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子を活性化し血液を凝固しやすくします。(ビタミンKを過剰に摂取すると血液が凝固してしまいそうですが、過剰摂取による有害事象はありません。)

 

ビタミンKは緑黄色野菜、海藻類にも含まれますがその量は納豆・青汁・クロレラに比べると少ないため大量摂取しなければ問題ないとされています。またビタミンKを完全に避けるのは困難であり、必要な栄養素の一つっでもあるため小鉢程度の量であれば問題ないことを伝えましょう。

 

どの程度のビタミンKの量から影響が出てくるかというと、250μg以上摂取を連日することで影響が出てくるという報告があります。

また1日あたり25〜325μgの範囲で、1日ごとの差を292μg未満に収め、1日あたり150μgの摂取を目標にすることが適切だろうという報告もあります。

 

医療従事者の確認ポイント

ワルファリンは相互作用が非常に多いため注意が必要です。併用により出血のリスクを上げる薬剤もあれば、抗凝固作用を減弱してしまう薬剤もあります。その機序は、CYP2C9を介するものや、相加作用で副作用のリスクが増加するもの、また作用機序が不明なものがあります。

 

 

添付文書に記載されている警告内容↓

カペシタビンとの併用により、ワルファリンの作用が増強し、出血が発現し死亡に至ったとの報告がある。

 

また添付文書に記載されている禁忌の薬剤としては↓

骨粗鬆症治療用ビタミンK2製剤 メナテトレノン(グラケー)

抗リウマチ剤 イグラチモド(ケアラム、コルベット)

抗真菌薬 ミコナゾール ゲル剤・注射剤・錠剤(フロリードゲル経口用、フロリードF注、オラビ錠口腔用)

 

その他添付文書で相互作用の注意喚起がある薬剤も多数あります。抑えておきたい相互作用注意の薬剤として添付文書より以下抜粋↓

解熱鎮痛消炎剤 アセトアミノフェン、ロキソプロフェン、セレコキシブ、メロキシカム、トラマドーなど

抗不整脈薬 アミオダロン、プロパフェノン、キニジン

抗生物質 アミノグリコシド系、クロラムフェニコール系、テトラサイクリン系、ペニシリン系など

 

他の薬剤との相互作用は、可能な全ての組合せについて検討されているわけではありません。ワルファリンによる抗凝固薬療法施行中に、新たに他剤を併用したり、休薬する場合には、血液凝固能の変動に注意することが重要です。

 

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