病院薬剤師は、薬局薬剤師やドラッグストア薬剤師に比べると世間への露出が少ないためどんな人間がいるかわからない人が多いと思います。
そのため病院薬剤師の像が勝手に出来上がってしまっていそうなので少しだけ訂正させていただければと思います。
病院薬剤師が勘違いされていそうな3つのこと
病院薬剤師は休みが少ない?
結論を言うと、薬局やドラッグストアの薬剤師のようにしっかり休みをもらえます。
病院薬剤師は通常の平日勤務の他に土日祝日の当直、宿直などがあるため、忙しい印象があると思います。
そのため年間休日が少ないと思うかもしれませんが、そんなことはありません。土日祝日の出勤があれば代休がもらえるため土日祝日働いた分、平日に休みがもらえます。むしろ土曜日に半日出勤がある薬局や、年中無休のドラッグストアに比べると休日が多い場合もあります。
しかし、休日や代休をしっかりもらえない病院もあるのは事実だと思います。
休みをしっかりともらえない病院の特徴としては、薬剤師の人数が少ない、マンパワーが足りないことだと考えます。自分が休んだ時、仕事を他の人にお任せする割合が人数が少ないほど大きくなります。そのため、あまりにも人数が少ないと物理的に仕事を回すことが不可能になってしまいます。
休みが少なくなってしまう病院は確かに存在しますが、人数が多い、マンパワーが足りている病院では休日、代休がしっかり貰えます。
病院薬剤師の年収は低い?
病院薬剤師の年収は、日本全体の平均年収と薬剤師全体の平均年収に比べて高くなります。
まず日本全体の平均年収は、令和元年の賃金構造基本統計調査によると441万円でした。441万円以上の年収の割合は、労働人口の約45%だそうです。
薬剤師全体の平均年収は令和元年の賃金構造基本統計調査によると508万円と計算されます。これを高いと取るか低いと取るかは人それぞれですが、日本の平均年収よりは高い結果となっています。
そして病院薬剤師の年収は令和元年の第22回医療経済実態調査より558万円でした。
また薬局薬剤師の年収ですが、管理薬剤師と薬局薬剤師で別れて表示されており、薬局薬剤師の平均年収は474万円、管理薬剤師の平均年収は752万円となっています。
病院薬剤師の年収と管理薬剤師を除いた薬局薬剤師の年収を比べて分かる通り、病院薬剤師の平均年収はけっして低くありません。
ただこの平均年収は全世代の平均を取っているものであり、新人薬剤師の年収は低く、勤続年数が長いほど年収は高いです。
また雇用形態によっては年収が低くなりますし、新人薬剤師だと残業がなく定時退社などあるので400万円弱の年収は十分あり得ます。
病院薬剤師も女性薬剤師が多い?
薬局やドラッグストアに勤めている薬剤師は女性であることが多い気がしますよね。そのため病院に勤める薬剤師も女性が多いのでは?と思う方が多いと思います。
実は薬局・ドラッグストア薬剤師の男女比と、病院薬剤師の男女比には差があります。
厚生労働省の統計によると、平成28年時点では全国の薬剤師は計301323人おり、そのうち男性116826人(38.8%)、女性184497人(61.2%)でした。全国的に女性が多いです。
このうち薬局、医療施設に従事する者は230186人です。(その他71137人は大学や医薬品関係企業などに従事しているようです。)
薬局、医療施設に従事する230186人のうち、男性78432人(34%) 女性151754人(66%)でした。全国の薬剤師の男女比に比べるとさらに女性の割合が高くなることが分かります。
もう少し詳しく薬局、医療施設に従事する230186人を見てみると、薬局勤務者は172142人、病院勤務者は52145人、診療所勤務者は5899人でした。ここからは明らかに薬局に従事する薬剤師が多いことが分かります。
ここで、薬局と病院の男女比にフォーカスを当ててみます。
薬局の従事者172142人の内訳は、男性57891人(33.6%)、女性114251人(66.4%)です。ここから薬局の開設者、代表者を差し引くと、男性45822人(29.6%)、女性109119人(70.4%)となり、さらに男女比に差が出ることが分かります。
一方、病院の従事者52145人の内訳は男性19916人(38.2%)、女性32229人(61.8%)です。全国の薬剤師の男女比とほぼ同じですが、薬局の比率と比べると病院の方が男性薬剤師の比率が高くなっています。薬局、病院共に女性薬剤師が多い結果となっていますが、1施設にいる男性薬剤師の人数を考えると、薬局よりも病院に多くいることがわかります。
これは結婚・出産などのイベントがある女性が薬局でパートなどの勤務がしやすいことや、知的探究心の強い男性が病院に就職を希望することが多いからと予測されます。
また地方性もあるようで、各都道府県の薬剤師数を見てみると、北海道、島根ではほぼ1:1の割合、東京では1:3で女性が多く、兵庫ではほぼ1:4で女性が多いです。
ちなみに過去の薬剤師数も調べてみると、昭和48年(1973年)までは男性が多かったようですが、以降はゆるやかに女性の割合が増えています。
ここ30年間はだいたい4:6の割合で横ばいとなっていますが、じわじわと女性の割合が上がってきている印象です。